03.12.07−代理人制度は今すぐ必要か?−
巨人の上原が、代理人を立てて球団との第1回契約交渉に臨んだ。もっとも巨人サイドは手続きに瑕疵があったとして、上原の代理人を代理人とは認めていないが。さらに渡辺オーナーは「代理人を連れてくれば損をする」と話しており、代理人交渉の広まりを徹底的に抑える構えだ。一方上原は交渉前に「誰かが変えないと」と熱意の程を語った。代理人交渉一般化への礎を築きたいようだ。代理人制度は選手が有する権利なのだから、雇うか雇わないかは、選手の自由であるべきだ。代理人を否定する巨人の姿勢はフェアではない。しかし、代理人制度が今の日本球界にとって、本当に必要な制度なのだろうか。そしてこの制度を定着させることが、今の球界にとっての最優先事項なのだろうか。
もともと代理人制度はアメリカで生まれた制度だ。1964年、ボストン・レッドソックスのアール・ウィルソンという投手が、長引いた球団との契約交渉を決着させるべく、代理人として弁護士を立てたのが最初とされる。その後段階を経て、今日では米スポーツ界にとってなくてはならない制度となった。もちろんその第一の理由は、代理人は給料を上げてくれるからだ。それは代理人の腕次第と言っても過言ではない。交渉上手で優秀な代理人は、競技の垣根を越えて引っ張りだこである。アメリカの選手と球団との契約が非常に複雑なのも大きな理由だ。例えば、年俸を受け取るにしても、一度に決められた額を受け取るのではなく段階的にアップしたり、時には支払いを契約満了後に後回したりするケースもある。税金対策としてだ。またインセンティブ(報奨金)や様々な条項に関する交渉もある。これだけの事を全て選手が1人でこなすとなると、それ相当の労力と知識を要する。当然その道のプロの代理人に一任し、自分はプレーに集中したいと考える選手は多い。
一方大リーグでは、敏腕代理人の活躍により選手の年俸が高騰し、球団経営の圧迫、入場料の引き上げなどによるファンへのしわ寄せといった問題が起きているのも事実。特にこの問題の増幅は、ここ数年顕著に見られる。また今オフは新たな問題が起きている。レンジャースのロドリゲスやレッドソックスのラミレスなど、代理人の活躍によって手にした20億円を超す高額年俸のおかげで、一人で球団経営を圧迫し、自球団だけでなく球界全体からお荷物扱いされている始末だ。これを見て今オフFAとなったシェフィールド(ブレーブス)は、彼らの二の舞を嫌って代理人契約を解約し、現在単独で交渉に臨んでいる。こういったケースは稀だが、今後増える可能性は十分にある。シェフィールドは「この方が代理人に振りまわされず、自分の思い通りにできる」と語る。
日本でもFA制度や複数年契約が定着しつつある。以前と比べて契約が複雑化していることはたしかだ。いずれは代理人の需要が増えるかもしれない。しかし現段階では、契約の複雑さにしてもアメリカのそれとは依然比較にならない。さらには、例え選手が微に入り細をうがつ契約を希望したとして、それをプロの代理人として完璧にこなせる人材が現在の日本には非常に少ない。昨オフの中村(近鉄)とメッツの交渉決裂も、代理人の能力の低さが招いた結果だった。一方アメリカではスポーツ専門の代理人を育成する環境が確立されている。専門の学部又は学科を持つ大学も多い。日本でも最近専門コースを持つ大学や専門学校ができたと聞くが、まだ産声を上げたばかりだ。何人ものクライアントを抱える専門の代理人や、専門の代理人を集めた事務所が表れる日は、日本ではまだだいぶ先のようだ。
基礎工事が出来ていないのにビルを建てるべきではない。制度のあり方についてきちんと論議した上で、本格的な導入を押し進めるべきではないだろうか。
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