03.11.21 『松井の新人王落選に学ぶ』
今年のア・リーグ新人王争いは、松井の落選という意外な結果に終わった。日本の多くのファンがこの結果に落胆したことだろう。松井の受賞は確実と思われていたのだから。受賞したのはロイヤルズのベロア内野手。例えるなら、突然松井の背後から手を伸ばしテーブルに用意されていたトロフィーをさらった、といったところか。彼の成績は、受賞に値する立派なものだった。しかしこのような例えを用いたくなるほど、彼の受賞は意外だった。しかし今回の松井落選という結果は、今後の野球国際化に一石を投じる可能性を秘めている。
議論を呼ぶ投票になることはあらかじめ予想されていた。日本のプロ野球で10年間プレーし、年齢もすでに28歳。彼に新人王の資格が果たしてあるのか。実際に新人王発表に先駆けて行われた選手会選出の新人賞は、ベロアの手に渡っていた。松井は候補者リストにすら挙がっていなかった。それは選手間が松井のキャリアを考慮した上で敬意を払った結果だっただろう。しかし今回の記者による投票においては事情が違った。松井は新人資格を有した列記とした候補者であり、他の候補者と同等に見られなければならなかった。にもかかわらず、2人の記者は意図的に松井を投票の対象から外した。
アメリカではこの結果と経緯を受けて、あらためて新人王の定義に関する議論が湧いている。新人王という制度が、黒人大リーガー第1号のジャッキー・ロビンソンを称えて制定された賞であることから、メジャーでプレーする前にレベルの高い黒人プロリーグでプレーしていたロビンソンと同様に、前歴を問わず資格選手は全て対象となるべきだ、との観念的意見もある。一方で、日本プロ野球のレベルを考えれば、マイナーから這い上がってきた若手選手と同等に比べるべきではない、との現実的見方もある。ただいずれにせよ今回の投票で重要なことは、松井は投票の対象であった、という動かせない事実である。松井に新人の資格があるという現在の定義がある以上、記者の個人的意見は差し挟んではならないはず。勝手な私見で決めるファン投票ではないのだ。公平を規すべき記者による投票である。もし松井の新人資格に不満であったなら、投票そのものに参加すべきではなかった。
しかし、松井の新人資格はおおいに議論されるべきことも事実。例えば来季36歳となる高津がメジャーで活躍した場合、候補の23歳の選手と同等に考えられるだろうか。海外のプロリーグで一定期間プレーした選手には、新人資格を与えないといったような対策を講じる必要がある。
同様に日本でも、海外のプロチームでのプレー経験のない外国人選手には、新人王の資格を与えてもいいのではないだろうか。野球においても国籍という垣根は確実に低くなってゆく。日本人だから、外国人だからという時代は終わらせなければならない。今回の松井の新人王落選が、アメリカ、日本両野球の発展に、良い影響を与えてくれるといいのだが。
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