鯛ちゃんのベースボール的放談
 


03.11.12『ダイエーのお家騒動が球界の構図を変える』

 日本一となった球団の選手全員が、優勝旅行をボイコットする。日本球史に例を見ない謀反が起こった。球団の決定に反発する意思表示という意味では、ストライキと同等の行為と見てよい。
事の発端は3日に発表された小久保の巨人への無償トレードだった。即座に選手会長の松中が発言。「球団にふざけるなと言いたい」と激怒した。その後球団には抗議の電話が殺到。選手からも球団に対する不信感を表す発言が次々と出た。事態を重く見た球団は混乱収拾に乗り出す。7日に中内オーナーが秋季キャンプ地宮崎を訪ずれ、選手に事情説明を行った。これで一件落着、かと思われたが、選手の怒りは収まらなかった。
ビジネスの観点から見ると、ダイエーの小久保放出はうなずける面もある。球団経営の悪化した球団が高給取の主力選手を放出すること自体は、さほど珍しくはない。それは優勝直後であろうとなかろうと、問題ではない。現に米大リーグでは、優勝後に主力選手が放出されることは頻繁に起きる。今年世界一になったフロリダ・マーリンズで97年優勝時から残ったメンバーは一人もいない。それが良いか悪いかは別として、あくまでも球団経営を考えるならば、小久保の放出もおかしくはないのだ。いわばリストラといってよい。
しかし、今回のダイエー球団の対応には、重大な過失が三つある。一つは、球団は今回のトレードは小久保自身が望んでいたと強調したことだ。真偽の程は定かではない。ただ、仮にそれが真実だとしても、球団として慰留に努めていないのであれば、それは球団側の意向で放出したのと大差ないし、そう採られても仕方がない。それを一方的に小久保の希望だったとして、球団が至らなかったという非を認めようとしなかった。
二つ目は無償トレードという放出の方法だ。球団の説明は小久保の気持ちに配慮した、とのことだが不十分だ。小久保がダイエーと複数年契約を結んでいて、無償トレードなら巨人が残りの年俸を払う、という金銭上の都合なら理解できる。しかし今回は上記のとおりではない。ダイエーは主砲を放出したばかりか、何の見かえりも受け取っていない。言い方は悪いが、お荷物となって捨てたと言っても過言ではない
三つ目は、トレード後の中内オーナーの発言だ。中には暴言と言えるものも含まれている。先だって行われた福岡ドームと系列ホテルの社員総会で、中内オーナーはこう述べている。「小久保は私が移籍させてやったのに、感謝の言葉もなかった。」とても一球団トップの発言とは思えない。事態収拾のため、宮崎の秋季キャンプ地で選手に説明した際も「小久保が希望したこと。本人には良かった」とおよそ見当違いの発言を連発。選手のヒンシュクを買った。
これら一連の球団の対応では、選手やファンは付いてこない。
小久保の件だけではない。村松がFA権の行使を申し出た際も、球団は一旦はFA宣言後の残留を認めないと説明したが、村松がFA宣言を匂わすとわずか3日後に前言を撤回している。
球団が経営難に陥っていることは周知の事実である。窮地を脱するために主力選手を放出することが、いたしかたないケースもある。しかし、多少の痛みを伴なう経営方針を遂行するのならば、これまでダイエーがとったやり方と違うやり方があったはずだ。それはすなわち、その場その場で変化する玉虫色の方針ではなく首尾一貫した方針を持つことであり、選手とファンに対して誠意ある態度でのぞむことである。この二つを念頭に置いていれば、事態は違った展開となっていただろう。
日本プロ野球が産声を上げて、以来74年。選手によるストライキが決行されたことはない。選手は親会社という看板を背負い、常にそのイメージを損なわないよう、イエスマンのような態度を求められてきた。今回の鷹軍団の優勝旅行ボイコットは、球界始まって以来の「上」への挑戦である。この挑戦が、主従関係にあった球団と選手の関係を変えるかもしれない。

 
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