鯛ちゃんのベースボール的放談
 
03.07.05 奇跡の芽を摘む、日本のトレード期限

 1995年のことである。8月15日時点で、エンジェルスは2位マリナーズに13ゲーム差をつけ、首位を独走していた。誰もが、エンジェルスの地区優勝を疑わなかった。しかし、そこからマリナーズに奇跡が起こった。首位エンジェルスが8月25日からまさかの9連敗。9月半ばにも、もう1度9連敗。一方のマリナーズは8月後半から俄然勢いを増した。あれよあれよという間にゲーム差は縮まった。ついに、最終戦を終えて両チームは同率首位で並び、翌日1試合だけの優勝決定戦が行われた。マリナーズはこの試合を9‐1でものにし、見事初優勝。地元シアトルは歓喜の渦に包まれた。
 8月半ばまでのエンジェルスは強かった。特に圧巻だったのがオールスター明けから8月15日までの1ヶ月余り。その間25勝8敗という凄まじい快進撃だった。この時点でのエンジェルスは、若手中心の強力打線と安定したベテラン投手陣を誇り、非の打ち所が無いかのように見えた。
 一方のマリナーズは、7月終了時でも、43勝44敗、借金1。首位エンジェルスに11ゲーム離されての3位だった。主力投手陣の不振と、主砲ケン・グリフィーを故障で欠き、苦戦が続いていた。それでもマリナーズはあきらめなかった。
 まず7月14日に、左の抑え、ノーム・チャ−ルトン投手を獲得した。さらにトレード期限ぎりぎりの7月31日、当時パドレスのエースだったアンディ・べネス投手を獲得、崩壊寸前の投手陣の立て直しを計った。
 攻撃の方でも欠点を補った。確固たる1番打者が不在だったため、8月18日に盗塁王ビンス・コールマンをトレードで獲得した。
 8月半ばにはグリフィーが戦列に復帰し、他の主力選手も勢いに乗った。投手陣も踏ん張った。その間、エンジェルスは自滅の一途を辿った。そして、マリナーズがわずか1ヶ月半で13ゲーム差を逆転するという、大逆転劇を演じた。
 たしかに、この大逆転劇はエンジェルスの自滅に因るところが大きかった。しかし、マリナーズが奇跡を起こすための準備を怠らなかったことも、賞賛に値する。もし、7月でペナントをあきらめていたならば、チャールトン、べネス、コールマンの3人を獲得することはなかっただろう。
 チャールトンは不振のアヤラに変わってストッパーを務め、9月だけで11セーブを挙げた。べネスも移籍後7勝を挙げ、手薄だった先発陣の穴を埋めた。コールマンも3割近くを打ち、見事リードオフの役割を果たした。彼らの活躍が、大いに奇跡を後押しした。
 現行のプロ野球のルールでは、トレード期限は6月いっぱいまでとなっている。目下阪神は2位に12.5ゲーム差をつけて独走中(6月20日現在)。セ・リーグの優勝争いは、風前の灯火となっている。しかし、95年のマリナーズのような、奇跡に向けた戦力補強の手段は、中日、巨人、ヤクルトの選択肢に、すでにもうない。
 
 
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