鯛ちゃんのベースボール的放談
 
03.06.09 コルクバット事件から人種問題へ

 サミー・ソーサのコルクバット使用が発覚したことに、全米のみならず、世界が揺れた。大リーグを代表するスーパースターであり、「グッドマン」としても知られるソーサが起こした今回の一件だっただけに、その衝撃は大きかった。事件翌日、メディアは一斉に「ソーサ叩き」に走った。「ソーサのキャリアに疑問符が付いた」という見方が大勢を占め、見出しに「うそつき」と付ける新聞も出る始末。その後、すぐさまソーサの所持する76本全てのバットと、クーパースタウンの殿堂に飾られている5本のバットがX線に掛けられたが、異常はみつからなかった。それでもなお、「これで疑念が晴れたわけではない」と言うが如く、いくつかのメディアは引き続き「ソーサ叩き」を続けた。現在、これらメディアのソーサの取り扱い方が、単なるコルクバットの問題から、人種問題へと発展しつつある。
 ボストン・レッドソックスのエース、ペドロ・マルティネスは、今回のソーサに対するメディアの態度に、特に厳しい評価を与えている。「マーク・マグアイアが同じことをしたら、こんな取り扱い方はされなかっただろう。こんな風になるのは、ソーサがドミニカ人で黒人だからだ。」マルティネスも、同じドミニカ人で、黒人である。
 アトランタ・ブレ−ブスの主砲、ゲーリー・シェフィールドもこう語る。「なぜこれほどまでにソーサが叩かれるかって?肌の色さ。」彼は、南部フロリダ州出身の黒人選手である。
 白人が支配するアメリカのメディアの世界。野球に限らず、黒人が引き起こす事件が起きる度に、報道に対して黒人が反発し、このような人種問題に発展するケースが多い。「O.Jシンプソン事件」がいい例だ。
 今回、メディアは直ちにソーサを疑った。あたかもソーサが以前からコルクバットを使用してきたかのように。コミッショナー事務局の調査が始まる前に、である。調査後も、ソーサの将来の殿堂入りに疑問を投げかける論調が飛び交う。
 たしかにこれがソーサではなく、マグワイアやリプケンであったなら、どうだっただろうか?このような報道は、白人社会から許されなかったかもしれない。ソーサのTシャツに、コルクを張りつけたファンも見られなかったかもしれない。マグワイアであり、リプケンの名誉、そして白人スターの名誉を著しく傷つけるからだ。しかし、今回のソーサに対する報道のあり方や、ファンの反応を非難する白人は少ない。それは白人社会ではタブーであり、それがまた黒人社会の反感を招いている。
 ソーサは間違いなく違反を犯した。ソーサほどのスターが引き起こしたとなれば、大リーグでも未曾有の事件である。しかし、それが単なる一つの衝撃的な事件にとどまらない。このニュースの影に、アメリカ社会に根をはる人種問題の深さを、あらためて感じさせられた思いがする。

 
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